知人の図書館情報学徒・@yuki_o氏に誘われて、「全国の図書館をリードしている」(yuki_o氏談)という浦安市立中央図書館へ行ってきた。そこがなかなかすごいところだったのでご紹介したい。
場所は、浦安市役所の裏手。東京からだと、東西線で浦安まで、あるいはJR京葉線で新浦安まで行くかして、そこから徒歩なりバスなりで移動する(浦安駅からだと1.7キロほどあるので、バスのほうがよい)。yuki_o氏いわく「図書館のセオリーどおり」という、地上2階建ての大きな建物が建っている。これが本当に大きくて、1階既存棟の一般開架室だけで892平方メートル、レファレンス室で210平方メートルもある。さらに書庫棟が併設されており、開架書庫の面積は1階360平方メートル、2階340平方メートル、地下1階619平方メートル。ちょっとした県立図書館並みの広さだ。ここに、実に72万3千冊におよぶ蔵書が収められている。市内に7つある分館もそれぞれ4.5万~6.1万冊ほど収蔵しており、yuki_o氏に言わせればいずれも村立図書館レベルらしい。
蔵書の内容も充実している。yuki_o氏が図書館情報学とともに哲学を専攻していた関係でそっち系の蔵書を中心に見て回ったのだが、彼いわく、大学の研究室でないと置いていないレベルの専門書までがっつりとカヴァーしていた。たとえば「貸本屋」に関しては、『明治期「新式貸本屋」目録の研究』『イギリスの貸本文化』『近世貸本屋の研究』と、タイトルだけで脳汁が湧き出しそうな本が、普通に開架書庫に置いてある(『近世貸本屋の研究』はその筋ではきわめて重要な書物らしく、yuki_o氏は『よくぞこんなものを…』と目を白黒させていた)。ほかにも『日本の植民地図書館』『刑務所図書館の人びと』『ソビエト図書館学概論』などなど、トーシロが見ても面白そうな本が「図書館」の棚にずらりと並んでいた。「哲学」では、カール・R・ポパーの本が『果てしなき探求』『開かれた社会-開かれた宇宙』『よりよき世界を求めて』『フレームワークの神話』と並んでいるのを見てyuki_o氏が感心していたり。
ぼくはぼくで「心理学」の棚を見て、ジャック・ラカンやミシェル・フーコーの著作がほぼ網羅されているのを見て唸り、『フロイト最後の日記』という大型本やユングの著した『パラケルスス論』といった、いかにも面白そうなものを見つけては喜んでいた。女性学のコーナーもやたら充実していて(蔵書検索によると900冊は下らないようだ)、中には『植民地台湾の日本女性生活史』全4巻なんていう、よだれが出るほど興味を惹かれる本も。文学関係は、一般の(yuki_o氏の言を借りれば『貸本屋』化している)図書館に比べると比率としては低いのだが十分に多く、スペイン文学数十冊、ポルトガル語文学百数十冊、イタリア文学600冊以上という世界。ルーマニア語文学だけで21冊ある市立図書館なんてほかに存在するのだろうか?
この図書館、正規職員の数がとても多く、40人を数えるらしい。yuki_o氏によれば、普通この規模なら8人程度で回しているのだそうだ。ひとしきり見て回った後で職員の方に話を伺ったのだが、本の選定のための「蔵書構成検討委員会」が設けられており、人文科学、社会科学、自然科学、語学・文学、児童の5分野に8人ずつがついて選書を行っているのだとか。恐るべき気合の入りようである。ちなみに浦安市の平成23年度当初予算のうち、図書購入費には1億円が充てられている。
それだけ本を持っていても利用されなければ意味がないだろうとお思いかもしれないが、いただいた資料によると、平成18年2月8日に累計貸出冊数3000万冊を突破し、約4年半後の平成22年10月20日には4000万冊を突破している。その間、平成20年3月には年間貸出冊数が200万冊を突破。浦安市の人口は16万人程度なので、人口1人あたりの年間貸出冊数は平成22年度で実に14.31冊に達している。yuki_o氏いわく、日本の図書館は1人あたり年間6冊を目指そうなどと言っているレベルなので、これは常軌を逸した数字らしい。
なお、人口15~20万人規模の自治体における、人口1人当たりの年間貸出冊数は文京区がトップで18.1冊。これはまあ、住民が住民だけに納得のいく数値だが、それに次いで多いのがこの浦安市なのである。以下、西東京市・愛知県安城市・台東区と続く。
なんともすごい。今度から、仕事の資料に困ったらここへ来ることも考えよう。いっそ、この図書館のために浦安に住みたいくらいだ。
ちなみに、図書館にこれだけお金をつぎ込めるのは、例のネズミ王国のおかげということらしい。お金があるっていいなあ、とつくづく思った。そして、橋下市長などにはこういうところの価値はわからないだろうなあ、とも。
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