ヲタファッション革命? まず金がねえよ。

公開日: : 最終更新日:2012/02/14 Diary

ヲタファッション革命第一弾 – iGirl

ファッションというものが分からない – はてな匿名ダイアリー

告白する。

ぼくが最後に服を買ったのはたぶん4年くらい前だ。

それ以来上下ともに一着も増えていない。むしろ減っている。回復不能なまでに汚れたり破れたり擦り切れたりして。

右のプロフ写真で着ている、外出着としても使う赤いロンTなど、恐ろしいことに2001年の冬ごろに撮ったと思しき写真でも同じものを着ている。当時精神科通院2年目で思いっきり病んでいるひとの顔をしているうえ、何かに目覚めたのか首に十字架ぶら下げていたりして、まあ近づいてきたら逃げるか殴るかしたい感じなんだけどそれはさておき。

なんでそんなことになっているのか?

お金がないからだ。

ぼくに金がない理由はまあ、長いこと引きこもりNEET同然だったことや親譲りの経済観念のなさというのもあるが、前世紀以来服に回す金なんてのはさっさとCDやら本やら同人誌の印刷代やらにつぎ込んでいた。昔ならそれこそS-VHSのビデオテープを月2箱以上は買っていたが、安いTシャツならひと箱分なのである。

そして最近はもうダイレクトに、食費だとか携帯電話代だとか、そういうものとCD代本代印刷代の優先度を比較する状況だ。もちろん常に前者に軍配が上がるので(それにも事欠くこともしばしば)、以前に比べて趣味に使う額はずいぶん減った。同人誌制作も、経済的な理由で続けられなくなったという面は大きい。もちろん、服を買うどころの話ではない。というか服を買うという考え自体、asami81氏のヲタファッション革命がらみの記事を読むまで久しく忘れていた。

衣食足りて礼節を知るという言葉があるが、単に体を覆う「被服」として以上の衣服、「今よりマシな見た目」というファッションとしての衣服というのは礼節に属するものだろう。それに欲目を出すのならば、まず十分な金銭的余裕がなければならない。

つまり、2万の予算なんてものがあったらまず一日三食食べるし電話代もまともに払うわい、ということだ。まあそのへんがどうにかなったとしても、服を買うよりはちゃんと浅倉大介と中田ヤスタカとI’veとElements Garden以外のCDも買ったり、活字の新刊を毎月30冊くらい買ったりするんだろうけど。

というわけで、ヲタファッションを革命しようとするにはたいてい、2つの厄介な問題が立ちふさがる。

  1. 服より趣味を優先するメンタリティ
  2. 貧困問題

前者は、オタクがカジュアル化し、従来の一般層の一部もアニメファンやゲームファンに取り込まれたことでファッションセンスも随分まともになったと言われている昨今でもいまだについて回る問題である。オタクはとにかく趣味に金がかかる。直接何かを買うのでなくとも、ジャンル全体にけっこうな投資を行う。そのへんを控えてまで衣服に意識を向けるインセンティヴを持たせるのは容易ではない。

たとえば、以前「アップトゥデートなものを追い求めるばかりがオタクではない」で触れた、月に数百冊の古本を購入し続ける後輩(新歓コンパでは、ここ1ヶ月で340冊だか増えたと言っていた)は、よほど寒くならない限り冬場でも青い半そでTシャツ姿で現れたりする。どうもそれ以外の格好があまり記憶にないのだが、彼に対して「今月は本買うの100冊くらい我慢して服の一着も新調してみようぜ」なんて声をかけるのはもはや人権侵害だという気すらしてくる。

彼は極端な例だとしても、多かれ少なかれ似たようなのはいる。常にサンダル履きのやつとか常に作業服のやつとかね。大規模な同人誌即売会に行けば、「服なんかに気使ってる場合じゃねえんだよ!!」と全身で主張している気合の入った方々がカート引っ張ったりでっかい紙袋抱えて早足で歩いたりしているのを現在でも多数目撃できる。相変わらず、そういうひとは多いのである。

そりゃあもう年食って老害の域に達しているキモオタどもで、若い世代はもっとマシ、社会性を省みず趣味にばかり投資するようなのは少ないだろうという声もあろう。

先日、仕事の打ち合わせの帰りにアニメ研の部室に寄り、1・2年生あたりと23時ごろまで行動を共にしてきたのだが、asami81の記事のbeforeとafterの中間みたいな格好の彼ら、渋谷のアニメイトでひたすら買い込んでいた。金がないといいつつポンと5000円以上。ぼくは真剣に金がなかったので手が伸びた3冊ほどのマンガとライトノベルを棚に戻さざるを得ず、臍を噛みながら店を出た。その後彼らは徹カラへ向かったので、まああの日だけで1万くらい消えたひともいるんじゃないかしらん。そしてたぶん、あれは彼らにとってそんなに特別な一日ではないのだ。自分だって昔はそうだったんだから。

若い世代だってやっぱり消費行動は激しいのである。だいったいこんだけコンテンツが増えれば、欲しいものだって増えるに決まっているのであって、格差社会が広がる中、萌え市場の成長がここ数年で話題になったのは、単にオタク人口の拡大のみならずひとりあたりの投資額の増大という要素もあると思うのだが、如何(とはいえDVDの売り上げの低落などは数値で出ているので、これははずしている可能性は高い。ただ、DVD1本買い控えればマンガやライトノベルや同人誌が何冊買えるか? ということも考えられる)。そういうひとたちは何の出費を抑えて趣味に金を使っているのだろう? 服って節約したらけっこうでっかい金が浮くジャンルではないかな? 食費なんかよりも。

というところで、後者だ。2万の予算というのはぼくにとっては天文学的な数字なわけだが、ぼくのようでなくともそりゃあ大金だというオタクは、会社勤めする社会人にだって多い。不況だ格差だと叫ばれるこのご時世にそんなところに金使っていられるか、『ハヤテのごとく!』のDVDでも買うわいと。ちなみに18日に出るらしい別冊アニカンR005の『ハヤテのごとく!』大特集、書き原稿はぼくが担当したのだけどその告知はまた改めて。

至極当たり前の話だが、非正規雇用が労働人口の3割だとか、ワーキングプアだとか希望は戦争しかねえよだとか、なんだかお金のない若者がたくさんいる世の中で、大半が若者であるオタクもまた格差社会に巻き込まれているのである。オタクは趣味にアホみたいに金をつぎ込んでいるのでなんだか金持ちに見えるのかもしれないがそりゃあ半分以上誤りで、たいていは一般人と大差ない収入レベルなのだろうけど、そのなかであれこれ削って趣味に多めに回していたりするわけだ。初手から収入が多いというイメージは、そういうひともいる、程度の意味しかない。

それこそ岡田斗司夫くらいの世代なら、あの時代で20万くらいするビデオデッキや1本3000円のビデオテープを買ってエアチェックできるのは富裕層の子息くらいだったのだろうけど(それもやっぱり当時のオタクの上澄みではあったのだけど)、残念ながらもう随分前からオタク全入時代である。人より裕福なオタクも、人並み以下に貧しいオタクもそれぞれたくさんいる。もちろん前者のほうが少数派だ。そういう連中だってオタク趣味に金を投じるのだ。しかも対象となるコンテンツはバカみたいに増え続けているときている。

そして、どうやら「人並み」のレベルはこのところ下がる一方らしい。そんな状況で服を買えってもねえ……。必ずしもオタクでなくとも、服なんぞに金を使えなさそうな「負け組」って、あなたの周囲にはけっこういたりしませんか? ともすれば、あなた含めて。

俗流若者論の批判者であり、『下流社会』の著者・三浦展氏の批判者である後藤和智氏のサブブログ後藤和智の雑記帳があんなデザインになっちゃっているのは、何かしら象徴的だ。

というか。東京でここ10年、100人以上のオタクとそれなりにパーソナルに接してきた経験から言うと(その大半は学生だったが)、オタクにはそもそも世間レベル以下の貧乏人が多い印象を受ける。まともな食事もとれずに先輩の家にしばしば転がり込んでいた某氏とか、風呂なし共同トイレのボロアパートでカップラーメンと米しか食わずにひたすら古いエロゲーと特撮と三国志三昧の生活を送っていた某氏とか、LDボックスを買うためにしばらく紅茶と砂糖のみの生活を強行して倒れた某氏とか、あのひとたちにオタク趣味に散在しなければ満足に生活できる所得があったとは口が裂けても言えない。当然、実にみすぼらしい身なりだった。

それらは10年近く前の話ではあるが、ゴールデンウィーク中に久々にアニメ研の合宿に顔を出してみると、やっぱり貧民服の連中はたくさんいた。つーか自分自身の着ていたものが今世紀初頭に購入した貧民服だった。ヲタファッションというのは、オタクくさい以前にそもそも貧乏くさいのである。それらが非コミュなどではなく貧困の表れではないかという視点も、少しは考慮されていい気がするのだが。

社会人の話をしていなかった。自分があまりにアウトサイダーなので、正直会社員というだけで経済的に勝ち組に見えてしまうのだが、文化系サークル出身者は相対的にそれほど高給取りでもないというのはやはりうかがえる。あいっかわらず就職市場では運動系サークル出身者が重宝されるので、人並み以上の所得のあるやつはわりとそういう出自だったりするらしく、ああ腹立たしい。ファッションについての言説は、結局あのへんの層を中心に流通しているんじゃないか、とたまに思う。

かてて加えて、オタクは落ちこぼれる傾向が強い。ぼくの所属していた3つのサークルでどんだけ留年・退学が日常茶飯事なことか。リア充から逃れられるアジールですからな、ああいうサークルの部室は。生きるか死ぬかというレベルで見れば、そんな程度では別にひとは死なないってのはつくづく実感するところだが、じゃあ人並みの生活を送れるのかというと、やっぱりこの遊び人たち、まともな就職ができたとは言いがたい。よその大学ならその傾向はさらに強いだろう。さらに世の中見渡すに、困ったことに会社でも落ちこぼれているオタリーマンはよほど多いらしい。高等教育以降の落ちこぼれは、ダイレクトに所得に響いてくるんだよなあ。

オタクを社会的な弱者とする議論ははるか以前から行われているが、コミュニケーション弱者よりも恋愛弱者よりも、経済弱者であることが最大の問題である、とぼくは考える。

というわけで、負け組のオタクがasami81によってヲタファッション革命されるには、この国の格差問題を是正しなければならない、というわけのわからん結論が出た。もちろんデータもろくに当たっていない記事なので「論」と呼べるレベルではないのだが。

執筆中に加野瀬さんid:kanoseやまた君か。の人id:matakimikaに話を振ったところ別方向にも話が進んだので、それはまた改めて記事を起こしたい。

下流社会 新たな階層集団の出現 (光文社新書)

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Comment

  1. a より:

    ⇒写真
    整形でこれほどまでに自信が出るのか。恐ろしい。

  2. samue より:

    なに若返ってるんですか。

  3. なまえ より:

    趣味に金がかかって仕方ねぇんだよ!というのは
    勝手なので、もてたいとか絶対に言わないで
    くださいね。

  4. y_arim より:

    #a
    #samue
    思うに、向精神薬飲んでいると表情が鈍くなるようだね。2005年頃の写真を見るともう病院ぶち込めって目をしている。どころか、薬太りして大変なことになってる。
    薬が抜けてこんな顔になったらしい。あと整形でこれってのはセンスなさ杉だろ情交。

    #なまえさん
    こんなぼくでもヒナギクは振り向いてくれました。

  5. fuldagap より:

    お金があればその分また別のコンテンツが購入できるわけですから、なんというか、あればあっただけつぎ込むのがオタだとすると、所得の問題でもない気がするわけですけれどもその辺はどうでしょうか。

  6. mad-capone より:

    お金がないのではなくて、ファッションに対するプライオリティが低いのではないかと。
    100万円をポンっと貰ったときに
    ちょっとぐらいファッションにも投資するかー!
    って考えにならないですよね?

  7. y_arim より:

    #fuldagapさん
    そのあたりはメンタリティの問題ですよねえ。ただ、十分な金があると、たまには服でも買ってやるか(上から目線)という意識が生まれるかも生まれないかもしれません。

    #mad-caponeさん
    やー、100万貰ったら10万くらいかけて新調するんじゃないでしょうか。さすがに前世紀から上着があんまり変わっていないのはどうか、とは自分でも思っていますので。
    というわけで誰かぼくに100万区ダサい。もとい、100万ください。なんかいろいろ見透かされたような誤変換だった。

  8. Tobishima より:

    はてぶにも書きましたが、別にもう一つ。
    「収集癖があるオタクが服に興味なんか持ったら、沢山買っちゃうだろ」問題。
    それが恐ろしくて手を出しにくいというのもあるなー。

  9. frog-cicada より:

    お金あっても服買うかなぁ。
    着る物がなくなるとか、必要性に迫られたときくらいしか買わない気がする。
    ファッションなんて小奇麗で汚くなければ何だっていいよね。
    私は一年中黒っぽい格好してます。

  10. Lugner より:

    37インチプラズマテレビの設置で腰痛を起こし合宿に逝くどころではなかったOBがきましたよ。
    確かに、落ちこぼれ社会人ヲタクは金がガチでないですねー。
    アニメの実況スレなんかいくと、社会人で働いている人は、10万近いBDレコとかポンと買ったり、太陽誘電のブランクDVDを買ったりしてますね。
    埋め難い格差と底辺ヲタクの貧困問題を実感します。
    服なんか99ショップで売っている380円のやつでいいじゃね

  11. y_arim より:

    #Tobishimaさん
    激しく同意。何をするにしても度を越してしまうのがオタクですなあ。「まとめ買い」とは明らかに違うヘンな買い方をしてしまう虞が。

    #frog-cicadaさん
    黒ってのが意外とセンスのなさを覆い隠すんですよね。ぼくもわりと愛用します。
    あと、黒と白の組み合わせは万能ってのは、ヲタファッションがらみのどっかで読みました。ただ、オタクが白を着るとなーぜーか、薄汚れますからなあ。

    #Lugner
    この貧弱ボディめ。
    ってかあなたはアニメ研にはあるまじきカッ飛んだ服装で昔から有名だったではないか。と同時にアニメ研の貧民社会人としても有名だったが。ぼくも名を連ねたぜ。

  12. tanahata より:

    仮に2万円があっても趣味に使ってしまうから金がない、を、金がない、と表現しても良いでしょうか?
    「まず金を使いたくねえよ。」が正鵠でしょう。
    見た目に投資しない人は貧乏くさく見えて当然です。
    金銭的格差ではなく、プライオリティ格差。

  13. y_arim より:

    いや、ぼくはオタクの貧困問題にまで言及しているのですが。どれくらい手元に金があるか(趣味にも服にも費やす前)によっても、プライオリティ変わってきますしね。
    とりあえず現状、2万あったらまともな飯を三食食べます。ぼくは。

  14. steam_heart より:

    はじめまして。
    西の文化圏でしたが、確かに貧民多いですな。けど、中途半端に社会人になったオタクが駄目オタクに「お前らそんなに時間があっていーなー」という逆階層も発生していることは一応言っておきます。
    あと、意外とオタクコミュニティはモノを共有する(できる)人も多かったりして、貧民ながらオタク的には文化度が高い気がします。

    自分は、橋の下の人に、「お前らオレらよりもひどいところに済んでいるな」と言われた寮の住人でした。
    今社会人のため、身なりや社会生活のための格好を維持するために金を使うのが鬱陶しくて仕方が無い。

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    フリーライター兼同人サークルLunatic Prophet主宰
    月刊『ゲームラボ』で「同人業界ジャーナル」連載中。その他、『オトナアニメ』『リスアニ!』などに寄稿。名前の出ない仕事も複数
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