2011年気に入ったライトノベル5選

公開日: : 最終更新日:2012/02/27 Book, Diary, Light-novel ,

 たまにはこういう記事でも書いてみよう。以後毎週末「アニメ」「マンガ」「音楽」とやっていく予定。

ハロー、ジーニアス

 全世界的な少子化と同時に、一握りの傑出した天才「ジーニアス」が出現した2019年が舞台。学校は統廃合され、いくつかの巨大な学園都市で少年少女たちが青春を謳歌している――これだけでもう、蓬莱学園好きとしてはグッとくる。
 足を怪我した陸上部の元エース・竹原高行と、彼を強引に第二科学部に引っ張りこんだジーニアスの少女・海竜王寺八葉、および彼らの周囲に集まる人々の青春模様を描いた物語である。強がったり見栄を張ったりしてはいても、どこかに欠落感や不安を抱えた若者たちが、ちょっとした諍いや大きな事件を通じて、自分の居場所を見つけ出していく、そんな話だ。ライトノベルらしくボーイ・ミーツ・ガールなラブコメの体裁をとってはいるが、本質は群像劇だと思う。
 作者の筆力は高く、浮ついたところのない端正な文章は、一般のレーベルから出しても通用するのではないかと思わせる。3巻のあとがきに「次は違う物語を」とあって、このシリーズにぞっこん惚れ込んだ身としてはまさか打ち切りか? と不安なのだが、もしかするとメディアワークス文庫で書くことになるのかも。いつの日か4巻が届けられることを心待ちにしている。

わたしと男子と思春期妄想の彼女たち

 ファミ通文庫第12回エンタメ大賞優秀賞受賞作。
 怪しげな虚無僧からもらったコンタクトレンズを装着すると、男子たちの「妄想彼女」が見えるようになってしまった女子中学生・峰倉あすみの物語。愛する幼なじみ・高柳尚人には妄想彼女が見えず、まさかすでに彼女持ち!? と慌てふためき、高柳の友人・佐島洋平の妄想彼女・リサとともに高柳の想い人を突き止めようとするのが1巻。その後も、親友となったリサとのコンビでクラスメイトたちの恋の悩みを解決していく。
 作者はペンネームからして女性で、思春期らしくアップダウンの激しいあすみの心情をよく描けている。その一方で、あすみが気風のいいべらんめぇ口調なため、あまり生臭くなりすぎていない。リサのモデル(つまり佐島の想い人)である学校一の美少女・河内利沙の、あすみへのツンデレぶりもなかなか萌える。各所に仕込まれたオタクな小ネタも好印象だ。
 月末には最終巻が刊行予定。もっと彼女たちの物語を読んでいたかったが、仕方がない、あすみの恋の行く末を見届けるとしよう。

六花の勇者

『戦う司書』シリーズの山形石雄、最新作。
 封印された魔神が再び目覚めるとき、運命の神は6人の勇者を選び出す。その伝説どおり、選ばれた証である紋章が体に現れた勇者たちが各地から約束の地へと集まったが、なぜか勇者は7人いた。誰だ、誰が偽者なんだ。疑心暗鬼にとらわれる勇者たちの中に、自称「地上最強」の少年・アドレットがいた。物語は、彼が偽者の疑いをかけられ、他の勇者たちに追われるところから始まる。
 一言で言えば、ファンタジー設定をギミックに用いたミステリ、あるいはミステリ仕立てのファンタジーである。誰もが少しずつ怪しく、かと思えばアリバイが証明されたりして、読者を混乱させる筆致はさすが。最後には一応の決着を見るのだが、そのあと、最後の最後でさらに大どんでん返しが待っていて、まったく飽きさせない。いま一番続刊が楽しみでならない作品のひとつだ。あと、『されど罪人は竜と踊る』でも挿絵を手がける宮城のイラストは非常に端麗で魅力的。

僕の妹は漢字が読める

 物語は、萌え文化がすっかり浸透した23世紀の日本から始まる。日本を代表する文豪オオダイラ・ガイへ会いに行く主人公イモセ・ギンは漢字が読めない。なぜなら、この時代は漢字が完全に駆逐されてしまったからだ。しかし、彼の義妹である読書家のクロハは「漢字が読める」変わり者。あるとき、彼らは平成時代の日本へタイムスリップしてしまう。そこで出会った少女・弥勒院柚は、23世紀の萌え文化の基礎を築いた伝説の作品「おにいちゃんのあかちゃんうみたい」のヒロイン、タイテイ・ホミュラに瓜二つだった――。
 HJ文庫のサイトで立ち読みできる序章・第1章があまりに衝撃的な内容だったため、発売前に重版が決定してしまうほど話題をさらった問題作。終盤が片手落ちという意見が多いが、ぼくの見るところ、あれは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のオマージュのようなものである。実際、2巻では1巻の終わりからそのまま続いているし。タイムスリップSF風味のライトノベルとしてはまずまずの出来だと思う。
 こちらも月末には3巻発売ですぞ。

涼宮ハルヒの驚愕

 ようやく『分裂』の結末を見届けることができた、という意味で、最後に挙げるのはこれ。
 色々と気がかりな点はある。俺の嫁佐々木が結局、天才にはどうやっても手が届かない凡人の悲哀を描くキャラに落ち着いてしまったように見える(このモチーフはご丁寧にも鶴屋さん‐国木田で繰り返されている)あたり、不満がないわけではない。なにより、このシリーズはこの後どうなってしまうのだろう? 作者にはもはや、続きを書く力が残されていないように見えるし……。しかし、ともあれ、読めてよかった。
 3.11のあとに「未来に希望をつなぐ物語」が読めたという意味でも。

 次回は来週末、「2011年気に入ったアニメ5選」編で。

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