Now I'm dying softly, so softly. There will be no words.


2011年気に入ったマンガ5選

 週末恒例の2011年回顧記事、3本目である。昨年はぼくには珍しく、熱心に商業マンガを読んだ年だった。同人誌など作っているくせに、あんまりちゃんとマンガを読んでこなかったのだ。

GIANT KILLING

 成績低迷中の弱小プロサッカーチーム・ETU(East Tokyo United)に、かつて背番号7を背負って大活躍していた達海猛が監督として帰還。大物チームを相手取って、次々と大番狂わせ(GIANT KILLING)を引き起こしていく――というストーリー。といって、いつも勝ち続けられるわけではなく、しばしば負けが込むあたりかなりリアルである。また、監督の采配を中心に、個々のフィールドプレーヤーに焦点を当てながら進行していくため、試合をマクロ・ミクロ両方の視点から追うことができる。スポーツにはトンと疎いぼくでも、十二分に楽しめる。
 キャラクターでも、達海はもちろんのこと、現在7番を背負う椿やミスターETUこと村越、「王子」と呼ばれるジーノなど、魅力的な面子が勢ぞろい。個人的にはジーノと、堺・世良のFWコンビが好きだ。やおい的な意味では世良×堺(セラサク)派。また、東京ヴィクトリーを率いる平泉監督と達海の掛け合いも見ていて楽しい。『モーニング』にて連載中。

進撃の巨人

 人類の領土が狭い「壁」の内部に限られ、外を人食い巨人たちがうろつく時代。突如出現した超大型巨人が100年ぶりに「壁」を突破し、束の間の平和が終わりを告げる。子供のころから「壁」の外へ出て行くことを夢見ていた少年、エレン・イェーガーは目の前で母親を巨人に殺され、復讐を誓う。やがて、彼は幼なじみのミカサ・アッカーマンやアルミン・アルレルトとともに訓練兵となるが、超大型巨人の再来によりなし崩し的に始まった初陣で、意思を持った巨人に変身し、巨人たちに立ち向かう――。
「王道少年漫画」と銘打たれ、公称660万部以上を売り上げている。いずみの氏が指摘しているように(本当に読みたい『進撃の巨人』レビューとは? – ピアノ・ファイア)、人類が拠点を築いて守りに入っているというエヴァ的な状況設定のなか、エヴァをひっくり返したように「外」を志向するストーリーが展開されていく。さながら、時代の閉塞感に穴を穿とうとする強固な一撃のごとく。絵は拙い(人間の描き分けがあまりできていないのは作者の力量によるものか、それとも故意か)がとにかく勢いがあり、画面に引き込まれること請け合いである。未読の方にはぜひ一読をお勧めしたい。『別冊少年マガジン』にて連載中。

聖なる花嫁の反乱

 本格ファンタジーマンガの第一人者・紫堂恭子の最新作。
 エーレの地の神に仕える「花嫁」に選ばれることは、少女たちの憧れの的。しかし、11年ぶりに「九番目の花嫁」に選ばれたおてんばな少女・エリセは、生贄に捧げられる特別な花嫁だった。そのことを知った恋人のリオンはエリセを連れて逃げようとするが、失敗。エーレの地を追放されてしまう。リオンを追ってエーレを飛び出したエリセは、戦乱に明け暮れる外の世界を目の当たりにする。そして、自分たちが外の世界で栄華を極めたデュナメイス帝国の末裔であることを知る。さらに奇妙なことに、エーレの神聖文字のあざを持つ者たちが、エリセのもとに少しずつ集まり始めていた――。
 講談社の無料配信サイトMiChao!にて連載されていたが、同サイトが更新終了したため、現在はFlexComicWebにて連載中。まだまだ先の見えない、謎の多いストーリー展開だが、ひとつのコマが1枚のイラストのような美麗な画面構成と、登場人物の深い内面描写で読者を飽きさせない(おそらく、萩尾望都に強い影響を受けていると思われる)。どんなときでも前向きで、希望を失わないエリセはとても魅力的だ。個人的にはエリセとリオンの双方にかかわる、トリックスター的な役割のヴァンが好きだが。

テルマエ・ロマエ

 ローマ帝国の建築技師ルシウス・モデストゥスは、公共浴場の設計に頭を悩ませていた。あるとき、風呂に転落したルシウスが水面に頭を出すと、そこには見たこともない「平たい顔」の人間たち――現代の日本人たちがいた。ローマとはまったく異なる入浴文化を発達させている「平たい顔」族の文化に感心したルシウスは、そこで見聞したものや手に入れたものをローマへ持ち帰り、次々と斬新な公共浴場を手がけていく。
 『コミック・ビーム』にて連載中。すでに各メディアで絶賛され、映画化が決定しアニメも放映されている作品をどや顔で取り上げるのもいささか気後れするが、面白いのだから仕方がない。異文化に対する敬意を失わないルシウスの人柄は、我々にとっても範となるものだ。ぼくが一番好きなのは、言葉が通じない日本の大工と共同で露天風呂を完成させる話で、ある種のSFマインドを刺激させられる。

常住戦陣!! ムシブギョー

 『ムシブギョー』として『週刊少年サンデー超』にて連載されていたものが、昨年から『常住戦陣!! ムシブギョー』として『週刊少年サンデー』に移ったもの。徳川八代将軍・吉宗の時代、江戸に跋扈する巨大な蟲を退治するために設けられた新中町奉行所、通称「蟲奉行所」の面々の活躍を描く。
 主人公となる月島仁兵衛は、腕は半人前ながら猪突猛進、どこまでも一本気で前向きで明るくて優しい、まさに熱血少年マンガのヒーロー。一昔前のぼくならこういうタイプのキャラクターは鼻について仕方がなかっただろうが、年のせいか、微笑ましく見られるようになった。圧倒的な強さを誇る無涯も、彼に憧れる火鉢も、仁兵衛を慕う町娘・春も、みな生き生きとして魅力的だ。勢い重視の、デフォルメの効きまくった作画も好印象。

 ……ぼくにしては珍しくマンガをよく読んだ、というわりには有名どころしか挙がらなかった。まだまだマンガ読みを名乗るには程遠い。マンガにお金を使い始めると際限がないからなあ。
 さて、来週は音楽編である。乞うご期待。


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